-IgA腎症の「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療-


IgA腎症の「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療

IgA腎症

腎臓は、血液中の老廃物や水分を濾過(ろか)し、尿を作り、体液の組成を一定に保つ働きがあります。血液を濾過するのは、腎臓の表面近くにある糸球体と呼ばれる毛細血管のかたまった組織です。

IgA腎症は、体内の免疫細胞が作る特殊なたんぱく質(免疫グロブリン)の一種、IgAが、この糸球体に沈着し、組織を破壊する病気です。IgAは本来、病原体など外敵を退治するが、これが腎臓に過剰に集まり、自らの組織を攻撃する自己免疫疾患です。原因は不明で、10―20歳代の人に最も多く発症します。

大半の患者は自覚症状がなく、約7割が検診で血尿が見つかり診断がつきます。発症から約30年たつと、半数が腎不全に陥り、人工透析が必要になります。透析の原因としては、糖尿病性腎症に次いで多いです。

治療は従来、降圧剤などの薬物療法や食事療法が行われてきましたが、病気の進行を遅らせることはできても、完治は無理でした。


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「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療

仙台社会保険病院腎臓疾患臨床研究センター主任部長の堀田修さんは、IgA腎症患者では、のどにある扁桃(へんとう)に病原体が常に感染し、糸球体に沈着しやすい異常なIgAが大量に作られていることに着目し、扁桃摘出とステロイド薬を組み合わせた治療法を考案しました。1980年代後半から800人を治療、その6割でたんぱく尿と血尿が出なくなりました。

治療は、入院して扁桃を摘出した後、強いステロイド剤(メチルプレドニゾロン)を3日間点滴して、4日間休むことを3回繰り返します。退院後は、弱いステロイド(プレドニゾロン)を飲み、2か月おきに量を減らし、1年後には服用をやめます。副作用は少ないです。

「扁桃の切除で、異常なIgAの供給源を断つ。次にステロイドの波状攻撃で、糸球体を攻撃する免疫細胞を抑える治療戦略」と堀田さんは説明します。扁桃を切除しても、体調に問題はないと言います。

治療を始めてから10年以上たった患者のデータでは、血尿が出てから3年以内に治療を始めれば、8割以上が治まります。一方、5年以上たって治療を始めた場合、完治率は4割以下に落ちます。早期に治療すればするほど、再発の確率は低くなります。しかし治療が遅れた患者の方でも、治りにくい反面、悪化もしないそうです。

堀田さんによると、腎臓細胞を採取し調べる腎生検の結果、糸球体の破壊が30%程度以内までの患者が併用療法の対象になります。併用療法は急速に広がっていて、保険も適用できます。


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