体力中等度かやや虚弱で、鼻水、ぜんそく、水のような痰を伴う咳、頭痛、悪寒、水おちに低抗があるというような人に用います。風邪、気管支炎、アレルギー性鼻炎、湿疹、腎炎などに応用します。水っぽい鼻水や痰が出て、くしゃみ、せき、呼吸困難、尿量減少、むくみ、胃内停水などがある人に使われます。
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)の効能
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小青龍湯(しょうせいりゅうとう)の解説
花粉症に対する小青龍湯(しょうせいりゅうとう)の効果
花粉症(かふんしょう)やハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎は、ホコリやダニや花粉などの抗原を体内に吸入すること により、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの症状を起こすもので、最初は抗原物質を吸入しても無症状のこ とが多いのですが、吸入するたびにだんだんと体内の抗体(IgE抗体)が多くなり、それがあるレベルを超え たときに、その抗原物質を吸入すると発症するものです。これを抗原抗体反応といいます。
具体的には、鼻粘膜の中の肥満細胞や好塩基球と結合している抗体(IgE抗体)と反応し、この肥満細胞か らヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症物質が分泌されて、これが鼻粘膜の知覚神経や毛細血管を刺激し 、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどを起こします。これがアレルギー性炎症のメカニズムであると、西洋医 学は考えます。
西洋医学ではこのアレルギー性鼻炎に対して、抗ヒスタミン剤を投与することがよく行われます。抗ヒス タミン剤が、分泌されたヒスタミンを中和して症状を改善する、という考え方に基づく治療法です。しかし ヒスタミン以外の物質による症状には効果がありませんし、抗ヒスタミン剤は服用すると眠くなるという副 作用があります。このため、炎症物質を抑制するのではなく、IgE抗体そのものの産生を抑えようという新し い抗アレルギー剤が開発されるようになりました。
花粉症などのアレルギー性鼻炎の原因は都市化による生活環境の悪化に加え、食生活の変化などで私たち の体質が変わったことが大きな原因ではないかと考えられています。つまりアレルギー性鼻炎は、現代日本 人の誤った生活習慣の結果なのではないかと考えられています。
漢方は花粉症などのアレルギー性鼻炎に対して、おもに「小青龍湯」(しょうせいりゅうとう)を用いま す。
からだ全体を温める「小青龍湯」(しょうせいりゅうとう)
小青龍湯の処方は8種類の生薬を用いますが、全体に温タイプの生薬で占められています。
配合は半夏(はんげ)6g、甘草(かんぞう)、桂皮(けいひ)、五味子(ごみし)、細辛(さいしん) 、芍薬(しゃくやく)、麻黄(まおう)、乾姜(かんきょう)が各3gになります。
「小青龍湯」(しょうせいりゅうとう)の証(しょう)を「中間証」するのが漢方では一般的ですが、証 にかかわらず広範囲の体質の人のアレルギー性鼻炎に効果があると考えていいでしょう。
また漢方では花粉症などのアレルギー性鼻炎に対して、他の処方、例えば麻黄附子細辛湯(まおうぷしさ いしんとう)や葛根湯(かっこんとう)なども効果があるとされています。しかし小青龍湯がアレルギー性 鼻炎に、一番合うと考えられます。
「小青龍湯」(しょうせいりゅうとう)で重要な働きをする乾姜(かんきょう)
漢方では、アレルギー性鼻炎は「冷え」が原因と考えています。その冷えた体を温めるのが小青龍湯に含 まれる乾姜で、細辛と桂皮がこの効果をさらに強めています。
しかし「小青龍湯なら飲んだことはあるが効かなかった」とよくいわれます。なぜでしょうか。ここに漢 方薬の品質の問題が絡んできます。8つの生薬の中でも乾姜は重要です。
乾姜は小青龍湯の中でも一番温める作用の強いものです。中国の乾姜と日本の乾姜では作り方が異なりま す。中国ではショウガをただ完全に乾燥したものですが、日本ではいったん蒸してから乾燥することになっ ており、味も中国の方が激辛で、体を温める力が強いのです。
もう一つ注意が必要なのが細辛という生薬です。細辛には北細辛(ほくさいしん)や華細辛(かさいしん )などいくつかの種類がありますが、他に土細辛(どさいしん)と称するものがあります。土細辛は杜衡( とこう)という細辛とは別の「カンアオイ」という薬草で、効能がほとんど同じために細辛の代用品として よく用いられているのですが、同じ効果を得るためには5~6倍使用しなくてはなりません。
「小青龍湯」を使用する際は、乾姜と細辛の品質に注意してください。
十味敗毒湯(じゆうみはいどくとう)の併用
小青龍湯では「花粉症」の鼻の症状はよく取れるのですが、目のかゆみは治りません。そのような場合は 、十味敗毒湯(じゆうみはいどくとう)を規定量の3分の1程度、併用すると効果があります。
また先ほど名前があがった麻黄附子細辛湯ですが、風邪を引きやすい虚証の虚弱体質の方、風邪を引いて も熱はあまり高くならず、むしろ寒さを強く訴えるような人に向いています。虚弱な人には風邪でもアレル ギー性鼻炎でも、麻黄附子細辛湯を使用するのが適切です。
適応される主な症状
- 花粉症
- 風邪、気管支炎
- 気管支ぜんそく
- 慢性腎炎
配合生薬
配合生薬の効能
麻黄(まおう)
麻黄は発汗、解熱、鎮咳、鎮痛作用があり、喘息や呼吸困難、悪寒、関節痛に有効で、漢方では、風邪の初期に頻用される葛根湯(かっこんとう)などに配合されます。
主成分のエフェドリンは気管支筋弛緩作用を有する他、アドレナリンに似た交感神経興奮作用を示し、散瞳、発汗、血圧上昇効果などをあらわします。
また、麻黄エキスおよびエフェドリンは体温を上昇させ、発汗を促して熱を放出させることにより解熱効果をあらわす他、抗炎症作用も認められています。
また、多糖体であるエフェドランA-Eを含有し、血糖降下作用を示します。また麻黄の根には、地上部と逆に血圧降下作用を示す他、止汗作用があります。
芍薬(しゃくやく)
芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。
主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。
乾姜(かんきょう)
乾姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。
辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。
甘草(かんぞう)
甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。
有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。
その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。
有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。
甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。
桂皮(けいひ)
桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。
主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。
風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。
民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。
細辛(さいしん)
細辛は抗アレルギーや鎮痛、解熱、利尿、鎮咳去痰の作用があります。漢方では解熱、鎮痛、去痰、鎮咳、新陳代謝亢進、アレルギー性鼻炎、関節炎、浮腫の初期などに用います。
有効成分は精油のメチルオイゲノール、サフロール、リモネン、リグナン類のアサリニンなどです。
民間療法では、この葉と根茎を煎じてうがいをし、口臭をなくすために使ったりします。また子どもの口内炎に細辛の粉末をよく練って、へその上に貼って使用します。
五味子(ごみし)
五味子には鎮咳、鎮痛、鎮静、肝障害改善の作用が認められている。漢方では、鼻アレルギーや気管支炎、強度の咳こみ止め、滋養強壮を目的に処方されます。これらの処方は新陳代謝を盛んにして、咳だけでなく浮腫を静める作用も示します。
五味子の有効成分は、クエン酸、リグナン類のゴミシンA~H、精油のシトラールなどです。
民間療法でも滋養強壮と鎮咳の目的に、五味子煎じて飲む方法が伝えられています。
半夏(はんげ)
半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。
しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。
鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。
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